子宮頸がんワクチンのがん予防効果が証明された

 今月、非常に重要な論文が発表された。これで長年の誤った政策は是正されるだろうか。

 HPVワクチン(所謂子宮頸がんワクチン)の実臨床における高い有益性(子宮頸がんの予防効果)が示されたのだ。これまでも、子宮頸がんの前がん病変である高度異形成の予防に関する有効性は示されていたが、ついに子宮頸がんの予防効果についても大規模データから示された。

 これはスウェーデンにおける研究で、160万人を超える同国の女性を対象とした大規模な研究。4価のHPVワクチンを少なくとも一回接種した群において、接種しなかった群と比較して子宮頸がんの発症リスクが63%低下したという。更に深掘りすると、17歳未満で接種すると88%低下、17~30歳で接種すると53%低下となり、早期に接種することの重要性も示された。HPVに感染する前にワクチンを接種することが大切なので、これは当たり前と言えば当たり前の結果。

 HPVワクチンが世界で広く接種されるようになってから20年弱が経過し、漸くその子宮頸がん予防における効果がこのように発表されるようになってきた。日本では約11,000人の女性が子宮頸がんに罹患し(2017年)、約2,800人(2018年)が亡くなっている1)。日本婦人科腫瘍学会もHPVワクチン接種の重要性を強調している2)が、厚生労働省は積極的な接種勧奨を差し控えたまま3)である。定期接種の対象でありながら積極的接種勧奨を控えるという謎な状況となり久しいが、これにより一時は七割程度あった接種率も現在は1%にも満たず、多くの救えるはずの命を危険に晒している。海外では子宮頸がん撲滅の可能性さえ語られるというのに。このようなおかしな状況は世界を見渡しても日本くらいで、奇異の目で見られている。薄弱な根拠を基に散々ワクチンの危険性を煽ったメディアの罪も重い。更にとんでもなく卑怯なのは、煽りっぱなしでその後続報を出さないことだ。HPVワクチンの接種で「多様な症状」がみられると繰り返し煽ったが、その後このような症状はワクチンを接種していない方でも同程度の頻度でみられることが分かっている。つまりHPVワクチンとの因果関係は否定されている。無責任な報道により國益を損ねるのみならず救える命を危険に晒すその姿勢は醜悪だ。今回の論文なども、より多くの命を救うために積極的に報道すべきだと思うが、そのような姿勢は現在のところ見られない。

 HPVワクチンの接種により子宮頸がんの発症リスクが63%低下。17歳未満に限れば88%もの低下。しかもこれは4価のワクチンでの結果であり、先日承認された9価のワクチンでは更なるリスク低下が見込めるだろう。今回の論文がおかしな日本の状況を変える一助となることを願っている。

1)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

2)https://jsgo.or.jp/public/hpv_vaccine.html

3)https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_hpv.html

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です