プロトンポンプ阻害薬で2型糖尿病が増える!?_腸活のススメ

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期使用と2型糖尿病の発症リスクについての論文が少し前に出ていたので触れたい。PPIとは胃酸の分泌を抑える薬で、胃潰瘍等の治療に用いられる。世界中で非常に多くの患者が使用しており、最も使われている薬の上位10に含まれる程。

 3つの大規模前向きコホート研究から、PPIの長期使用者においてはPPIを使っていない人と比べて2型糖尿病のリスクが24%高いとの結論が得られた、という内容。それもPPIの服用期間が0~2年では5%、2年以上では26%高いということで、長期間に亘り服用を続けることでリスクが上昇する傾向がみられるという。更に興味深いのは、PPIの使用を中止するとリスクが下がるという点。使用の中止期間が0~2年で17%、2年以上で19%のリスク低下だそうだ。時系列的な関係性からして、PPIの長期使用と2型糖尿病の発症には関連がある(必ずしも因果関係ではない)と言って差し支えないだろう。

 さて、ここで非常に重要なことは、このPPI使用と2型糖尿病発症リスクとの間に腸内微生物が絡むかもしれないということだ。これまでの他の研究でPPIの長期使用は腸内微生物叢に大きな影響を及ぼすことが示されており、腸内微生物叢の多様性が減少することが知られている。又、腸内微生物叢と2型糖尿病の発症とは関連があるとこれまた別の研究で示唆されている。つまり、PPIの使用により腸内微生物叢が変化し、その影響で2型糖尿病の発症リスクが高まっているのではないか、という仮説がここから示唆される。

 これを補強する研究結果として、例えばPPIの使用と2型糖尿病はどちらもビフィドバクテリウム属の減少に関係しているとの報告もある。PPIと同様に腸内微生物叢に大きな影響を及ぼす抗生物質の使用も、2型糖尿病の発症と関係しているのではないかと示唆する研究もあり、やはり腸内微生物叢の変化が何らかの働きをしていそうだ。

 勿論、これをもってPPIの長期使用を即座に中止せよなどと言うのは暴論であり、寧ろ危険である。PPIを使用せねばならないのであれば使用せねばならないわけで、それが避けられない患者も多いとは思う。適切な服薬により適切に身体を管理することが重要だ。ただ、長期使用は腸内微生物叢の多様性を減退させそれがまた他の疾患の発症等にも関与し得るということは頭に入れておいて損はなさそうだ。

 まずはPPIを使わなくて済むように日頃から健康に気を付けるしかないかな。腸活ポートフォリオで健康になりましょう。

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