自閉症が糞便移植で治る時代へ_腸活のススメ

自閉症と腸内微生物との関係が示唆されてきている。米國では59人に1人の子供が自閉症らしい。我が國においても似たような数字を出している研究があるので、概ねこの前後の有病率なのかもしれない。その自閉症に腸内微生物が影響していて、それを正常化してあげることで治癒に至るのであれば朗報だ。
研究者達は自閉症の子達が消化管の問題(膨満感、便秘、下痢等)を抱えていることが多いことから着想し、もしかしたら腸内微生物が関与しているかもしれないと思い至ったようだ。まずマウスで確認したところ、自閉症様の症状を呈するマウスは腸に炎症があり、リーキーガット症候群の症状が表れていることが分かった。これは人の自閉症でも同様に報告されていることだ。又、自閉症患者の腸内微生物叢は著しく多様性が失われていたという。
そんな中、2017年に希望の光とも言えるようなある研究が報告されている(論文はこちら)。この研究では、7歳から16歳の自閉症の子供18名を対象に、糞便移植の効果を検証している。結果は劇的だ。まず消化器症状が改善した。腸内微生物叢の多様性も増し、特にビフィドバクテリウム属、プレボテラ属、デスルフォビブリオ属が増えた。以前の記事でも書いたが、ビフィドバクテリウム属は精神安定に重要な役割を果たしていることが示唆されている。そして最も重要な点、自閉症の症状も大きく改善が見られた。この効果は八週間の追跡後も維持されていたという。
同じ研究グループがその二年後に発表した研究でも、更に驚くべき報告がなされている(論文はこちら)。上述の18名の子達を二年後に調査したところ、消化器症状の改善のほとんどは維持されており、自閉症に伴う症状は治療直後よりも寧ろ更に改善していたという。腸内微生物叢の多様性も維持されたままで、ビフィドバクテリウム属とプレボテラ属は変わらず増えたままだったようだ。18例と症例数は少ないが、自閉症患者への糞便移植の有効性と安全性を示唆するに十分な結果であり、今後更に大規模な臨床試験が実施されることが期待される。
自閉症患者への糞便移植が標準的な治療となる日もそう遠くないかもしれない。腸内微生物の可能性は無限大だ。