腸内微生物が前立腺癌治療薬の効果まで高める!?_腸活のススメ

腸内微生物が一部の抗癌剤の効果に関係しているようだというのは以前noteにも書いたことがあるが、似たような話が前立腺癌の治療でもあるようだ。
先月末にNature Communicationsに掲載された論文によると、前立腺癌の治療薬であるアビラテロン酢酸エステル(AA:ザイティガという商品名で処方されたりする)を飲んだ患者において腸内微生物叢が変化し、治療薬の効果を高めたという。AAを服用した患者の腸内ではAkkermansia muciniphila(アッカーマンシア・ムシニフィラ)という細菌が著しく増えた。この細菌はもともと肥満の人とか血中コレステロール値や空腹時血糖値が高い人とかでは少ないと言われており*、恐らく抗炎症作用を有すると考えられる。実はこの細菌は癌免疫療法の薬剤の効果を高めることに関与していることが最近分かってきているらしく、免疫全般に好影響がありそうだ。しかもこの細菌、ビタミンK2の産生を増加させるというおまけ付き(ビタミンK2は腫瘍の成長を阻害して抗癌作用を示す)。つまりこの細菌が増加することが、AAの治療効果の高さに寄与しているのではないかと考えられるという。アッカーマンシア・ムシニフィラ、なかなかすごいやつ。
まだまだ小規模な試験でこのような傾向がみられただけだが、こうしたことがより確からしいとなれば、プロバイオティクスや糞便移植により癌患者の腸内微生物叢を変化させて抗癌剤の効果を高めるといった治療も視野に入ってくる。癌治療は日進月歩で進化しており昔と比べれば治療成績も向上しているが、まだまだ致命的な癌も多い。患者本人がもともと持っている力を活かすことで癌治療の効果を高められるのなら素晴らしいことだ。今後の更なる研究に期待したい。
それにしても、腸内微生物の可能性は無限大だ。毎日のお味噌汁、納豆、ヨーグルト。簡単にできることは続けたい。