COPDが腸内微生物で分かる!?
先月、COPD(慢性閉塞性肺疾患)と腸内微生物の関係についての論文が出ていた。これは個人的に少し驚きがあった。COPDはたばこ病とも言われ、喫煙が主要な病因であると言われている。煙草の煙や汚染された空気によって肺に炎症が起きて呼吸がしにくくなる病気と腸内微生物がどのように関係するのか最初はピンと来なかった。
意外と知られていないが、COPDは不可逆性(根治しない)と言われており、症状を改善するというよりも進行を止めることが治療の目的となる。世界では死因の第三位と言われており、日本でも上位に来る。そもそも一般にあまり認知されていない病気だということもあり、診断率が低く、適切に診断・治療されていない患者が多数いると見積もられている。
肺の微生物がCOPDの進行に関与することは以前から知られていたが、この論文では腸内微生物ではどうかということを研究している。腸内微生物と代謝産物をCOPD患者と健常人とで比較したところ、両者には著しい違いがあったという。COPD患者の腸内ではStreptococcusやLachnospiraceaeが増加しており、関連する代謝産物にも違いが見られた。
この結果から、将来的には糞便の解析という侵襲性の少ない検査でCOPDの診断ができるようになるかもしれない、と筆者らは言う。現状、COPDの診断にはスパイロメーターという呼吸機能検査をする必要があり、息を思いっきりフーッと吐かなくてはいけないこの検査は高齢者には恐らくしんどい(COPDは高齢者に多い)。症状の経過もこの呼吸機能検査で監視していくことになる。そもそも、この検査はあまり実施されていない(確か健康診断の必須検査にも入っていなかったような…)。そういう意味で、もし糞便の解析でCOPDの診断や症状の経過観察ができるようになると随分楽になるのでは、ということだろう。腸内微生物叢を正常に戻すことを意図する新たな機序の治療薬の開発にも繋がるかもしれない。
冒頭に述べたように、最初はピンと来ていなかったが、よく考えてみるとCOPDは炎症性の疾患なので、腸内微生物と何かしら関係することは寧ろ自然であると納得した。炎症と言えば腸内微生物である。また一つ、腸内微生物の奥深さに触れた。