永遠の生命
いずれヒトは脳だけ残して永遠に生きられるようになると言う人もいる。夢がある話かもしれないが(私は絶対に嫌だが)、実際には難しいだろうと思う。ヒトの身体はそんなに単純ではないだろう。
例えば栄養を摂取すること一つとっても、ただ単に栄養素を摂れば良いというものでもない。食物を摂取した後、それが吸収されて身体に使われるまでに、例えば腸内微生物がそれを分解して産生する物質がいろいろな役割を果たしたりする。そういう機構を無視して栄養素だけ摂っても、食事をするのと同じ効果は望めない。私が一部のサプリメントの効果に懐疑的なのもこの理由が大きい。又、例えば脳腸相関。果たしてこれを人工的に再現できるのだろうか。腸だけではない。筋肉や骨への刺激だって色々なシグナルを生み心身に影響を及ぼす。だから運動が大切なのだ。そうした複雑な身体機構を人工的に再現できるとはとても思えない。
縦しんば今後の研究でそうした身体内の作用をとても単純化して説明できるようになり、脳だけ残して生きることができるようになったとして、それは最早ホモ・サピエンスとは呼べないかもしれない。ホモ・サピエンスはきっともっと複雑な生き物だ。それはより簡素になった新たな生き物と言える。自分が生きている間、あと数十年の間にそうなることは考えにくい。しかしその先は分からない。そんな世界を見ずに死にたいと切に思う。人間が人間であるうちに。