トランプ後の世界における米國の優先課題と亜細亜
米國の戦略國際問題研究所(CSIS)のアンソニー・コーデスマン氏が先週興味深い解説記事を書いている。
Setting New U.S. Strategic Priorities for a Post-Trump World
トランプ後の世界において、米國の戦略的な優先課題は何か、九つ列挙している。
- 國家予算
- 防衛と外交の資源
- 世界の新たな無秩序
- チャイナとロシアとの対峙
- 北朝鮮とイランとの対峙
- 負担増を強いてばかりでなく真の戦略的パートナーシップを:欧州の場合
- 負担増を強いてばかりでなく真の戦略的パートナーシップを:湾岸諸國の場合
- 負担増を強いてばかりでなく真の戦略的パートナーシップを:亜細亜の場合
- 米國の価値観への帰還
米國の限られた資源の中では、米國にとって最も戦略的に価値のある國や課題にそれらを投入する必要があるとして、選択と集中の重要性を説いている。チャイナやロシアとの関係も、競合というよりも対立になりつつあることを危惧し、競合と協調が重要だと主張する。そして同盟國や戦略的パートナーをもっと大事にすべきと強調する。
欧州との関係性において、国民総生産の2%以上を國防費に使えと米國が圧力をかけていることを挙げ、既にNATOはロシアと比較して多額の軍事予算を計上しているのだからその必要性はないと言う。同様の理屈で亜細亜においても、豪州・ニュージーランド・日本・シンガポール・韓國の國防費を合計するとチャイナのそれの半分程度になり、更に潜在的な戦略的パートナーであるインド・インドネシア・マレーシア・フィリピン・台湾・タイ・ベトナムも加えると十分にチャイナに対抗できる程度になるという。防衛協力の観点のみならず、これらの亜細亜各國の経済・貿易・技術基盤はチャイナとの経済的競合の文脈でも非常に重要であるとし、より充実した連携を呼び掛けている。
この記事の中では、SIPRI(ストックホルム國際平和研究所)の計算としてチャイナの防衛費を2611億ドルとしているが、実際にはもっと多いと思われる(一応チャイナの公表としては1781億ドルだが全てを公表しているとは到底考えられない)。その場合結局亜細亜各國の防衛費を合計しても対抗できないではないかという話になってしまうが、まさにだからこそ量より質を追求して効果的な同盟・戦略的パートナシップを亜細亜において展開していくべきだと個人的には考える。防衛費の大小は一つの指標とすべきではあるが、ではどの程度なら適切なのかは答えがなく、それよりも効果的・効率的な賢い予算の使い方が求められるはずだ。我が國は米國の同盟國として、戦略的な協力において大いに貢献すべきだ。いや、寧ろ先導するべきだ。
待っているだけで達成できる目標などない。菅政権には積極的に動いていただきたい。